18.8.23~25北海道視察①~栗山町~
栗山町は札幌市から車で1時間のところにあり、近頃はベッドタウンとしてもニーズが高まっているそうです。人口は約1.2万人面積は203㎢(小平の10倍の広さのところに20分の1の人がくらしています。)高齢化率は38.7%で、小平市の23%弱よりだいぶ高い状態です。
特別養護老人ホームくりのさと吉田義人さんからのお話によると栗山町社会福祉協議会による「ケアラー支援事業」は2009年介護保険事業からの撤退検討から始まっているそうです。2010年3月に介護保険事業から撤退し、町民の企業による居宅介護支援、訪問介護が始まりました。時を同じくして日本ケアラー連盟が発足し、その調査に協力したところから現在の事業展開が行われたとのことでした。
調査により町内訳6000世帯のうち15%が介護世帯であること、そのうち60%の介護者が何らかの病気を抱えていることがわかり、介護する家族には過重な負担がのしかかっており共倒れするリスクが高まっていることから介護家族の支援を本格化させました。
事業の具体的な内容としては、
- 命のバトン事業・・小平市では救急医療情報キットとして円筒形の筒の中に情報を記した紙を入れ、冷蔵庫に場所を決め保管しています。栗山町ではこれを命のバトンと呼び、毎年配布先を訪れる仕組みができています。訪れた際には介護家族の疲れやストレス、病気をチェックするアセスシートも作っています。
- ケアラー手帳・・母子手帳のようなハンドブックで、家族の体調チェックや気分転換方法、相談先の一覧が掲載されています。愚痴を書く欄もあるそうです。「決して一人ではない」というメッセージが込められています。
- 息抜きの場ケアラーズカフェ・・小平ではオレンジカフェを各圏域ごとに月に1~2回午後の2時間ほど開催しています。栗山町では「ケラーズカフェサンタの笑顔」が日・祝日以外は毎日営業しているそうです。2016年には他に2か所のカフェが開設しました。
- ケアラーカード発行・・介護家族に万が一のことが起こった時に「私には介護をしている家族がいます」と知らせるカード。お財布の中などに入れて携帯します。
今後は24時間、相談や支援を受けられる体制づくりが急務とし、情報システムや介護ロボットの可能性も探っていくとしています。現在、ケアラー支援条例策定に向けて様々検討を重ねているそうです。
栗山町では1988~1989年に行われたふるさと創生事業の1億円を使って、福祉の専門家を育てる学校を創設し、卒業生には町内外で活躍いただいたそうです。他の多くの自治体ではモニュメントを作ったりイベントを開催することに使いましたが、栗山町の使途は町の将来にわたるビジョンを明確に持っていたからこそできたものだと思います。
国は在宅介護を推奨していますが介護家族の犠牲の上に成り立つような制度では行き詰ってしまいます。介護の社会化を実現し、誰もが自分の生活と介護、仕事が両立できるような仕組みを作っていけるように、市民の声をしっかり生かしていきたいと思います。