会派視察報告⑤~まちで、みんなで認知症を包む 大牟田市
大牟田市は人口約12万人面積81.4㎢高齢化率33.8%かつて三池炭鉱で栄えたまちです。
2002年に始まった「地域認知症ケアコミュニティ推進事業」は、地域全体で認知症への理解を深め、認知症になっても誰もが安心して暮らし続けるまちを作ろうというものです。
事業の内容としては、
①人づくりとして認知症コーディネーター養成研修。デンマークの例をモデルとした大牟田市独自の人材養成プログラムで、毎月2日間を2年間受講します。応募の条件は介護の事業に5年以上かかわった人など、専門性の高い人材を養成します。現在104名がコーディネーターとして活躍しています。
②早期支援として、認知症早期発見早期対策のために1次健診として物忘れ予防・相談検診を地域交流施設や商業施設等で開催。2次健診として保健所で専門医による診断。予防教室への参加呼び掛け、かかりつけ医への報告など必要な支援が受けられるようになっています。専門医、認知症サポート医、認知症医療センター医師、認知症コーディネーター、市の担当者で構成される大牟田市地域認知症サポートチーム(役割として受診拒否や若年性認知症、自動車の運転を止められない・・などの困難事例への対応、事例検討、介護事業者へのアドバイス、相談検診・予防教室の結果解析等)が継続して支援します。
③理解啓発として小中学校で認知症の絵本教室、認知症サポーター養成講座を開催。子どもの頃から認知症の人の気持ちや支援について学び、自然にサポートができることを目的とする。
④地域づくりとして、高齢者SOSネットワーク作りと徘徊模擬訓練を行う。これは、認知症になっても安心して暮らせるまちを作るために、市民への認知症の理解と見守りの重要性を啓発し、日常的な声掛け・見守りの意識を高めるとともに、徘徊行方不明発生時に対応するSOSネットワークを構築するものです。大牟田地区高齢者SOSネットワークは家族から捜索願が出されると、警察署が近隣市や市内の郵便局、駅、バスやタクシーの事業者にFAXを流します。大牟田市長寿社会推進課へは電話連絡し、同課は介護サービス事業や値域包括センター、医師会、民生委員等に情報のメールを配信し、商店や、学校、PTA等に伝達されます。1年間に約20人がこのネットワークを利用しています。徘徊模擬訓練では重点的に発見時の声のかけ方について学びます。現在は「徘徊」という言葉は本人の立場で考えた場合適当でないとの考えから、なるべく使わないようにしているそうです。
大牟田市も久留米市に匹敵するほど小規模多機能型居宅介護サービスの事業者が多く、こちらは居場所や認知症予防の機能も兼ねているそうです。
地域で安心して徘徊できるとはなんて素晴らしいのだろうと思います。家族にとって、一人で抱え込まなくても良いというのはどんなにか安心だろうと思います。認知症を理解し、地域で支える。私たちのまちもこんなまちでありたいと思いました。徘徊模擬訓練や認知症サポーター養成講座を繰り返すことから始められるのではと思います。